遊牧民
薄いベージュのコクーンコートに細い黒革のベルトを組み合わせたコーディネート。
女の子らしいシルエットがかわいくておしゃれだと私は思った。
「○○ちゃんおはよう!そのコートかわいい〜」とあいさつすると、○○ちゃんは嬉しそうにしていた。隣にいた先輩も「同じの欲しい!」と褒めていた。
だから、給湯室での会話に耳を疑ってしまった。
「なんかさ〜、○○ちゃんの今日の服、遊牧民っぽくね?w」
さっきの先輩が、彼女の仲間たちに○○ちゃんのコーデをディスっていたのである。
クスクスと笑いながら、「モロッコとかにいるっぽくない?」「いや、モロッコじゃなくてモンゴルでしょ!」「そうだ、モンゴル!○○ちゃんモンゴルにいそうだよね」「てか、○○ちゃんって最近ちょっと調子のってない?」「わかるわかる」
やめてよー!!遊牧民に失礼だよ!!
さっきは私と一緒に褒めてたじゃない!コソコソと陰で人のファッションにダメ出しするくらいなら本人に直接アドバイスしてあげなよ!ていうか、○○ちゃん、めちゃくちゃかわいいし!おしゃれだし!調子のってる感じも全くなくない?
もしかして僻み?
それってとってもかっこ悪いですよ。
…と言いたい気持ちを飲み込んだ。
バイト先の空気を壊すクラッシャーになりたくなかったから。
波風たてず、聞かなかったことにして、○○ちゃんとも先輩たちとも何事もなかったかのように接する。
それが正解だと分かってはいながらも、なんだかモヤモヤした気持ちを拭えず、書いてもしょーもないことをマナコレに綴ってしまった。
きっと、私も先輩たちと同じなのだろう。
私は弱い人間だ。