銀座線、19時

今日のブログは私が所属するサークルの先輩によるものである。

(執筆ありがとうございます!!)

 

「すいません降ります」
「すいません降ります」
 ドアを塞ぐOL二人組は気づいていない、あるいは、乗りこんできたばかりなのにわざわざもう一度降りるのが面倒で、聞こえないふりをしているのかもしれない。さっきまで「赤坂見附赤坂見附」と繰り返していた声の主が、東京方面に向かうには丸の内線に乗り換えるよう案内する。言われなくても乗り換えるのに、どうして日本の電車はこんなにもうるさいのだろう。
「すいません降ります!」
 長髪の女性がちらっとこちらを振り向く。やっぱり後者だったのか、と思ったら、一つ前の駅あたりでドア付近に立つなりしてスムーズに降りる準備をしておけよみたいなことをその顔は言っている。ピクリともしないショートヘアの女性は、多分前者だ。「ドアが閉まります」が聞こえてきたあたりから、これはやっちゃったねオーラを背中に感じる。
「すいません降ります!!」
 と、あと何回叫んだのかは覚えていない。ホームをスタスタと歩きながら、急いでないから別にいいけど、全然押しのけてでも出られたからねみたいなニュアンスを含んだ目を作って、ほんの一瞬だけ振り返る。二人のOLの顔はドアに隠れている。もし車両に取り残されていたら……? 次の駅までの、あるいは、そういえばさっきの駅でなくても別ルートで帰れたわ、といわんばかりに3つ先の駅で降りるまでの。沈黙の時間。そのいたたまれなさを紛らわすために、メトロの騒々しいアナウンスがあるのだろうか。
 

考えただけでもぞっとする。ああぞっとする。